2016年6月23日
【近未来】土木建築資材で革命を起こせる(かもしれない)新素材をご紹介
建築資材の伝統と革命
昔から建築の骨格を形成する素材として使われ、「4大素材」と呼ばれてきたのは「石」「木」「鉄」「コンクリート」の4つです。近年ではこれら伝統的な素材に加えて、科学技術を駆使してさまざまな優れた特性を持つ素材が開発されています。建築業界に革命をもたらす可能性がある、それらの一部をご紹介します。
多彩な新素材の性質がもたらす新機能
住宅に関係する部材にはさまざまな機能が求められます。そう遠くない未来、新しい素材の性質により、飛躍的にこれらの機能が向上した部材ができるかもしれません。
光を操るさまざまな素材
人間は光を求める生きもの。脳は日光を浴びることで、やる気に関係する神経伝達物質「セロトニン」を分泌するので、建築でも採光性は重要な要素といえます。そのため、採光性を高める素材は多数開発されてきました。
木材といえば茶系統の色が常識ですが、木材の細胞壁の中から光を遮蔽する成分「リグニン」を除去すると、なんと透明な木材ができます。これを壁の一部に使えば強度の高い窓となり、採光性がアップします。木材なので熱伝導率が低く、断熱性能も◎。もちろん再生可能資源なので、環境にあまり負荷を与えません。
透明なアルミニウム「ALON(エイロン)」はそれ以上に強度が高く、同じく窓などに使えそうな素材です。4センチほどの厚みで50口径の機関銃も防ぐということなので、高層ビルの窓に使っても安心ですね。酸化アルミニウムと酸化タンタルからなる「弾性ガラス」も強靭なので、スナイパーに狙われる心あたりのある方にはおすすめの素材です。ほかにも光伝導コンクリートや無色透明な太陽光発電パネルなど、採光に役立ちそうな新素材はさまざまな角度から開発が進んでいます。
逆にサリー・ナノシステム社の「ヴァンタブラック」は、すべての光を吸収するため、アルミホイルに塗るとシワが見えなくなるほど真っ黒です。外壁に塗ると傷みが目立たずおしゃれかもしれませんが、熱伝導率が高すぎる(銅の7.5倍)ので夏は暑そうですね! 巨大な組織の機密情報をうっかり握ってしまった人は、光を迂回させることでレーダーから見えなくなるという新素材「メタマテリアル」の導入を検討してみましょう。
建物を守るかもしれない技術
採光性以上に重要な建物の要素は「強度」です。地震の多い日本列島に住む私たちにとって、安心して住むことのできる強度は欠かせません。クモの糸の成分「フィブロン」を人工合成し、紡績した素材は柔軟でありながら鋼鉄の340倍の耐久性を持つといいます。壁紙に使えば、お部屋がちょっとした要塞になるかもしれませんね。
建物の強度を損なう原因に、経年劣化や汚損によるクラック(ヒビ)の発生、クラックや汚れに発生する藻の根から浸入する雨水による躯体の劣化があります。それを防ぐには、外壁塗装などの定期的なメンテナンスが欠かせません。
しかし「超撥水テフロン」を外壁に使えば雨に濡れないので汚れが付着せず、塗装などの外壁メンテナンスが不要になるかもしれません。ガラス粉末によるコーティング素材も、同じく雨に濡れない素材です。さらに、あらゆる液体をはじくコーティング技術「SLIPS」も開発されています。これらの技術の実用化によって住宅の長寿命化だけでなく、太陽光発電パネルへの活用による発電効率確保が期待されています。
移動可能な家や、3Dプリンタでできる家も
現在主に使われている建築の骨格素材は、上述のとおり木材や鉄、コンクリートなどです。これらはどれも重たい(比重が大きい)素材なので、多くの人の頭の中には「重たい=頑丈」という固定観念があるのではないでしょうか。しかしその常識は、近年の技術開発によって根底から覆されつつあります。
現在「世界で最も軽い素材」とされているボーイング社の「マイクロラティス」は、高い強度を持ちながらもタンポポの綿毛の上に乗せても綿毛を傷めないほど軽い驚異的な素材です。さらにこれを超える素材として、「宙に浮きたがる」性質がある素材の開発もGoogle社によって秘かに進められているとか(Google社責任者Astro Teller氏談)。
これらを使えば、乗り物兼用の移動可能な軽い家が実現できるかもしれません。「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009年公開、ピクサー・アニメーション・スタジオ)を、CGなしの実写でリメイクできる日も近そうですね。
データを入力するだけで立体的な造形物を生み出してくれる、「3Dプリンタ」用の丈夫な素材「タフレジン」も開発されています。これが実用化されれば、家づくりがもっと気軽にできる時代がくるかもしれません。
スマートフォンの急速な普及など、子どものころSF映画で観たような世界が日々現実のものとなってきています。ご紹介した新素材は今のところ、どれも現実感がないかもしれません。しかしこれらの素材が私たちの生活を変える日も、実はそう遠くないのかもしれませんね。
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