2024年11月8日
使っていても、意外と知らない。防じんマスクの区分とは?
粉じんから作業員を守る命綱。防じんマスクの区分とは
建築や土木、製造などの現場では、ホコリが舞う中で作業しなければならないことも少なくありません。
そこで必需品となるのが「防じんマスク」です。
この防じんマスクには「区分」が表示されていますが、この数値が何を示しているかご存じでしょうか。
ここでは、実際に使用していても意外と知られていない防じんマスクの区分についてご紹介します。
ホコリ舞う現場で作業員の呼吸を助ける「防じんマスク」
防じんマスクとは、強力なホコリ対策のマスクです。
一般的なホコリはもちろんですが、人体に有害であるダイオキシンやアスベスト、火山灰などを想定したものや、東日本大震災で世間の注目を浴びた除染作業に対応しているものもあります。
防じんマスクは労働安全衛生法に基づいて国家規格が定められており、その基準をクリアしなければ商品化できません。
厳しいテストをクリアした微細な粉じんまでも捕集できるものだけが、「防じんマスク」として認定されます。
■もしも防じんマスクがなかったら
人体にも咳や鼻水、繊毛といった、外部からの異物の浸入を防ぐ機能が備わっていますが、その機能で排除しきれない微細なホコリを吸い込んだ際、健康被害が起きる恐れがあります。
もっとも恐ろしい健康被害は「じん肺」と呼ばれる病気で、微細なホコリが肺の奥深くに到達し、蓄積されることで発症します。咳や息切れが増え、進行すると呼吸困難を引き起こします。
また、気管支炎、肺がん、気胸などの合併症にもかかりやすくなります。
作業中は防じんマスクの着用を徹底し、作業員の安全を守りましょう。
防じんマスクの種類と区分
防じんマスクには「使い捨て」と「取り換え式」があります。
そして、さらに捕集効率で3段階に分けられており、もっとも捕集効率の高いものが「区分3」、低いものが「区分1」となっています。
防じんマスクの性能テストには、塩化ナトリウム粒子を用いた固体の捕集試験と、フタル酸ジオクチル粒子を用いた液体の捕集試験があり、その組み合わせで12種類に分類されています。
塩化ナトリウム粒子 を用いた固体の捕集 試験(S) |
フタル酸ジオクチル 粒子を用いた液体の 捕集試験(L) |
区分 (粒子捕集効率) |
|
---|---|---|---|
使い捨て(D) | DS1 | DL1 | 区分1 (80%以上) |
DS2 | DL2 | 区分2 (95%以上) |
|
DS3 | DL3 | 区分3 (99.9%以上) |
|
取り替え式(R) | RS1 | RL1 | 区分1 (80%以上) |
RS2 | RL2 | 区分2 (95%以上) |
|
RS3 | RL3 | 区分3 (99.9%以上) |
■作業環境に合った区分のものを
労働安全衛生法や電離放射線障害防止規則など、さまざまな法律で作業内容に即した防じんマスクの仕様が示されています。
次の表は、それらの内容をまとめたものです。
作業環境に合ったものを採用しているかどうか、チェックしてみましょう。
粉じん等の種類及び作業内容 | 防じんマスクの性能区分 (上の表に準ずる) |
|
---|---|---|
廃棄物の焼却施設で ダイオキシン等の粉じんを吸い込む 恐れがある場合に使用するもの |
オイルミスト等が混在しない場合 | RS3 RL3 |
オイルミスト等が混在する場合 | RL3 | |
放射性汚染の恐れがある 区域内の作業や 緊急作業で使用するもの |
オイルミスト等が混在しない場合 | RS3 RL3 |
オイルミスト等が混在する場合 | RL3 | |
金属のヒューム発散場所の 作業で使用するもの |
オイルミスト等が混在しない場合 | RS2 RS3 DS2 DS3 RL2 RL3 DL2 DL3 |
オイルミスト等が混在する場合 | RL2 RL3 DL2 DL3 | |
管理濃度が0.1mg/m3以下の物質の 粉じんを 発散する場所の作業で使用するもの |
オイルミスト等が混在する場合 | RS2 RS3 DS2 DS3 RL2 RL3 DL2 DL3 |
オイルミスト等が混在する場合 | RL2 RL3 DL2 DL3 | |
その他の粉じん作業 | オイルミスト等が混在しない場合 | RS1 RS2 RS3 DS1 DS2 DS3 RL1 RL2 RL3 DL1 DL2 DL3 |
オイルミスト等が混在する場合 | RL1 RL2 RL3 DL1 DL2 DL3 |
おわりに
じん肺は医学が発達した現代においても有効な治療法が確立されていない、恐ろしい病気です。
発症例の多くが職業に起因しており、訴訟までいたった例もあるほど。
安全な作業環境は作業員のモチベーションアップにもつながります。
散水や排気といった粉じん対策と合わせて、作業環境に合った防じんマスクの着用を徹底しましょう。
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