2016年3月22日
建設業は多角化すべき?すべきでない?
中小の建設業者では以前から林業や公園剪定、除雪など建設業以外の業務も行われていました。
最近ではこれまで事例が少なかったような業種への参入も相次ぐようになりました。
建設業の多角化について考えていきましょう。
安定稼働が難しい建設業
顧客からの注文があり、初めて仕事が発生する建設業。
作業員の安定稼働が難しいという特性があることから、人材を安定して確保できるだけの仕事量を得るために業務の多角化は有効です。
市場が小さければ小さいほど事業の多角化は重要性を増します。
予算削減の影響で公共事業が圧縮されたため、大量倒産を防ぐために国も1990年代後半から建設業の新分野進出を支援しています。
2003年に農業への進出事例がモデル事業として取り上げられたことも、多角化の後押しになっているようです。
■これまでの複業とまったく新しい分野への挑戦
中小の建設業者はこれまでも、剪定や除雪など本業とは違う仕事を請負ってきました。
業務に必要な重機が建設業と重なる点があり、効率的です。
また、建設業に携わる人材は高所作業や体力仕事に慣れているため効率的に作業が進められます。
また、剪定には緊急性がなく、除雪が必要なほど雪が降った状態だと建設作業が進めにくいため、基本的に本業に支障をきたしません。
一方、近年では農業・介護・環境ビジネスなど、今までとは全く違う分野の事業に新規参入する企業が増えてきています。
■多角化を支援する行政の制度も
建設業の多角化を支援する行政の取り組みも整ってきました。
まだ全国的に広がっていないものの、山梨県や鳥取県や横浜市などいくつかの自治体では、建設業者の経営安定化を目的とした補助金制度を設けています。
■多角化経営の事例紹介
実際に多角化に成功している事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
ご紹介していきます。
■事例1 農業と六次産業化
農業は多角化のモデル事業ともなっており、多くの企業が取り組んでいます。
建設業の閑散期に繁忙期が重なる作物を選んで栽培し、作業量の平準化を図るモデルが多いようです。
山形県鶴岡市の山本組では農業系ベンチャー企業のアニス(川崎市)と連携し、自社で解体した建物などの中古資材を活用したビニールハウスを建設。
アニスのノウハウに従って有機農法を採用し、トマトをはじめ付加価値の高い野菜を出荷しています。
また、自社工場でトマトを加工する六次産業にも取り組み、さらなる付加価値向上を追求しています。
■事例2 手探りで始める介護業
近年急成長を遂げているのが介護事業です。
介護保険制度導入にともなって在宅サービスの分野で規制が緩和され、民間事業者も参入できるようになったことが背景にあります。
建設業の多角化でも既存の不動産を活用するなどの新規参入が目立っています。
北海道河東郡音更町の阿部工務店は、2002年に指定認知症対応型共同介護施設「グループホームつくし」を開設。
延べ床面積600平方メートル以上の建物を新築し、18室の運営を行っています。
介護分野では常に一定の人材確保が必要なので、一本化はできません。
介護支援専門員をはじめとする有資格者を新たに採用し、完全に別部門として運営している形が多いようです。
■そのほかの事例
岡山県岡山市の小坂田建設では、いわゆる「便利屋」にあたるサービス業を行っています。
高齢化が進む地域だということもあって、雨戸の張替えや庭の雑草取りなど、ちょっとした困りごとで重宝されているようです。
林業、水産業も人気です。
会館建設による葬祭関連事業や農園付き貸別荘の経営、木材成分を使用した化粧品の製造販売、左官技術を生かしたインテリア小物の製造販売など、建設業者は幅広い分野に新規参入を果たしています。
大阪府枚方市の株式会社京星は使用済コンクリートを再資源化しています。
このように処理が必要な廃材をリサイクルして商品を開発するなど、自社の強みを生かしつつニーズが高まりつつある環境ビジネスに乗り出すケースも多いようです。
おわりに
建設業多角化でのねらい目は、自社の強みが活かせる分野です。
地域、人材、ノウハウ、保有している重機、不動産資産や取引先のネットワークや人脈などを分析して、参入する分野を選んでいます。小売業や飲食業といった、ライバルが多くしっかりとしたノウハウが必要な事業は失敗に繋がりやすいので、よく考える必要があります。
自社の強みは何なのか、売りは何なのか。それらを考えて生かすことが、多角化成功への第一歩です。
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