日々雨風にさらされ、人や自動車に踏みつけられても大丈夫なほど硬く頑丈なコンクリート。
しかし実はそんなコンクリートも、年々老朽化していきます。
傷んだコンクリートの放置は、事故やけがのもと!
ここでは古くなったコンクリートの検査と補修についてご紹介します。
目次
知っておきたいコンクリートの基礎知識
コンクリートはセメントで固められた砂・砂利・水の塊です。
水と反応することで硬化する「水硬性セメント」が広く利用されており、強アルカリ性を示す性質があります。
鉄筋コンクリートはこのアルカリと反応して鉄筋の周囲に「酸化被膜」が形成されるため、基本的に鉄筋のサビが進むことはありません。
この現象によって強度を維持し、私たちの生活を支えてくれています。
■コンクリートが傷むとどうなるの?
硬化したばかりのコンクリートは強アルカリ性ですが、空気中の二酸化炭素に触れることで徐々に中性化していきます。
中性化すると鋼材表面の酸化被膜が失われるため鉄筋が錆び、膨張した鋼材の体積でコンクリートが押し出される「爆裂」という現象が起きます。
爆裂した箇所には欠けやヒビが生じるため、そこから水が浸入し、さらに中性化が進んでしまうのです。
この工程が繰り返されることで、石のように頑丈だったはずのコンクリートは徐々にもろくなっていきます。
劣化して強度が下がったコンクリート構造物からは、タイルやコンクリート片といった剥離物が落下し、誰かを傷つけてしまう可能性も。建物の管理者が賠償責任を問われ、企業の社会的信用を失うことも考えられます。
コンクリートに残る高度経済成長期の面影
鉄筋コンクリート造(RC造)の建造物は税法上、減価償却の計算に使用される耐用年数が47年と定められています。
昭和30年代から40年代にかけての高度経済成長期に大量に建築された建物は軒並み耐用年数を迎えつつあり、それらの強度が危惧されています。
しかしこの耐用年数は便宜上用いられる数字であって、実際の耐久性と連動しているわけではありません。
適切なメンテナンスを行い、60年以上使用されている建物も多数存在しています。
その一方、設計やメンテナンスが正しく行われていなければ建築物の寿命はもっと短くなります。
そこで重要となるのが、コンクリートの検査と補修です。
■老朽化を見抜く!コンクリートの検査方法
コンクリートの検査方法としてもっとも多く取り入れられているのが「目視」ですが、国土交通省「第5回道路メンテナンス技術小委員会」の資料によると、2013年10月時点で橋梁点検要領のある自治体の点検方法のうち、およそ8割が遠望目視等ですませているのが現実です。
しかし、コンクリート内部の老朽化は目視だけでは見抜けないことも。
触診や打音検査も取り入れた近接目視による検査が求められています。音が軽く響く箇所は鉄筋が腐食し、空洞ができているので注意しましょう。
位置的に難しいところでは、高所撮影用のポールカメラなどが活躍しています。
超音波やX線、赤外線を使えばより詳細な検査結果が得られます。
小規模な自治体では土木技術職員が不足しているため、民間企業への検査業務の委託が検討されているようです。
民間企業にとってはチャンスともいえるでしょう。
■コンクリートの補修方法
ごく小さなヒビである「ヘアクラック」は、市販の補修材を使って応急処理ができます。補修材ではふさげないサイズなら、「エポキシ樹脂注入工法」などを検討しましょう。
爆裂や欠け、穴、構造上の問題から生じる大きなヒビ(構造クラック)などには、樹脂とセメントを混合した補修材が必要となります。
コンクリートの傷んだ部分を取り除き、鉄筋からサビを綺麗に落として錆止め塗装・プライマー塗布をした上で補修材を充填しなければなりません。
素材の混合比やプライマーの塗布状態によっては補修部分が剥離するため、専門的技術が必要です。
小さなヒビでもそのままにしておくと劣化が進行し、補修に高額の費用や手間が必要となるため、早めの対処が求められます。
おわりに
コンクリートの検査方法としてもっとも多く取り入れられているのが「目視」ですが、国土交通省「第5回道路メンテナンス技術小委員会」の資料によると、2013年10月時点で橋梁点検要領のある自治体の点検方法のうち、およそ8割が遠望目視等ですませているのが現実です。
千葉県君津市広岡では2015年12月23日、国道410号のトンネル「松岡隧道」で天井崩落の事故が起きました。驚くべきは、1か月前に補修工事が行われており、吹き付けたばかりのモルタルが落下したと言うことです。
コンクリート関連の点検や補修は、今後ますます増えていくでしょう。コンクリートの劣化は、人の命を奪う大事故につながりかねません。定期的な正しい検査と適切な補修で、建築物の安全性を確保しましょう。