
農家の方にとって、畑や農作物を脅かす獣害は、切っても切り離せない問題です。
野生鳥獣による農作物などの被害は、平成22年をピークに毎年少しずつ減少はしているものの、平成27年のデータによると年間被害額は未だ170億円を超えており、日本の農業へ深刻なダメージを与え続けています。
害獣の種類別でその被害額を見てみましょう。
動物 |
鹿(シカ) |
猪(イノシシ) | カラス | 猿(サル) |
被害額 | 59億円 | 51億円 | 16億円 | 10億円 |
このように莫大な額に及ぶことがわかります。害獣被害に受けないために防獣フェンスやその他害獣ネット、電気柵など様々な対策がされています。
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目次
害獣対策のための防獣フェンス・ネット商品の種類
害獣対策は、個人レベルで対策フェンスや、商品を導入することができます。それでは、その種類とメリット・デメリットを見ていきましょう。
【トタンでの防獣フェンス】
トタンで畑や農作物を囲う事によって、目隠し効果が期待できます。
これは、イノシシやシカなどの飛び跳ねる動物も向こう側が見えない場所には基本的に飛び込まないという習性を利用した効果で、害獣を畑に近づきにくくさせることができると言われています。
ただし、トタンは隙間ができやすく突破されやすいという難点もあります。
【防獣ネット】
四肢や蹄などがネットに食い込むことを嫌がるという性質を利用して、獣を近づきにくくさせる効果が期待できます。
また、比較的安価に用意することが可能で、設置もそれほど難しくないという点はメリットの一つでしょう。
鳥獣などはもちろんイノシシ、シカなどの対策になります。しかし、設置が簡単という反面、破れたり噛み切られたりするなど、耐久性の問題が心配されます。
【金網フェンス】
住宅等でも使われる頑丈な金網フェンスで畑を囲うことで、イノシシやシカなどの侵入を防ぎ、畑を守ります。
イノシシの場合は1.5m以上の高さがあれば、飛び越えての侵入を防ぐと言われており、シカの場合は2.5mほど必要だとされています。
強度が高く、害獣に突破されにくいという大きなメリットがありますが、設置がやや困難で、個人での導入が厳しいというのと、価格が他の柵よりやや高いという部分もあります。
【ワイヤーメッシュ防獣柵】
イノシシなどを防ぐための柵として効果的に利用することが出来ます。コンクリート用の建材としても使用されていることから、軽量な上に、強度もあり、設置も簡単で、安価というメリットがあります。
また、軽いという特徴から風が強い場所でも風に煽られて倒れたり抜けたりすることが少なくなっています。
錆びにくい材質でつくってありますが、長い年月使用するとサビがきてしまいます。
【電気柵】
獣に電気ショックを与えることで侵入を防ぎ追い払うという対策方法です。
動物の学習能力を利用するため、畑や農作物から撃退するための効果が大いに期待できるのです。
電線型のものはイノシシやシカなどに効果的で、ネット型のものはサルに効果的だと言われています。
ただ、人が触れてしまうと危険ですし、設置の際にも事故につながる危険性があるため、ある程度の知識が必要です。また、安全管理の徹底も必要となるでしょう。
効果的に防獣フェンスを設置するためのポイント
害獣の侵入を許さない為には、フェンスと地面の隙間を作らない、周囲を全てしっかりと囲うといったことを徹底する必要があります。
イノシシやシカなどの害獣はフェンスを跳躍して突破すると思われがちですが、地面を掘って侵入するケースや、フェンスの隙間を見つけ出して侵入することもあります。
そのため、徹底した隙間対策が害獣の侵入を防ぐ鍵を握ると言っても過言ではないでしょう。
まず、傾斜地のある場所や藪のある場所などの近くにフェンスを設置するのは避けましょう。傾斜地のそばにフェンスを設置してしまうと、その地形を利用して容易に飛び越えられて侵入を許してしまう場合があり、藪が近くにある場合はイノシシなどの隠れ家を作ってしまうことになります。傾斜地がある場合は2m以上離した場所に設置し、フェンスの近くにある藪は周囲3mほど刈り払いをしておきましょう。
また、前述のようにフェンスを設置する際は適切な高さが必要になります。イノシシやシカは助走なしで軽々と1~2mほど跳躍するため、それぞれの獣にあった高さのフェンスを設置する必要があるのです。
ほかにも、掘り返し対策にワイヤーメッシュやトタンをフェンスの足元に敷いたり、様々な材質のフェンスを重ねて使用したりするなども効果的でしょう。
ワイヤーメッシュによる防獣フェンスの設置方法
ワイヤーメッシュによる防獣フェンスは比較的簡単に設置することができます。
害獣対策は地区(集落)単位での協力が必要
獣害対策は個人で行っても意味がなく、集落単位で協力して行っていく必要があります。
まずは、集落全体として、畑のある地域を獣たちのエサ場と認識させないことが大切です。
「ここは危ない場所だ」「エサが容易に取れる場所ではない」と獣たちに学習させていくことが大切です。地域の皆で動物の勉強を行ってみたり、柵を強化していったりなど対策を進めていってみましょう。
実際、市や集落住民が一丸となって獣害対策を行っている地域も多く、そういった地域だと被害件数の減少が顕著にみられます。まずは、ちょっとした勉強会や声かけ運動など、楽しく始められるものから着手していくのも良いでしょう。
また、一つの家が本格的なフェンスを導入しても意味がないため、集落全体で一斉に同じレベルの対策をしてみてください。
イノシシやシカなどの動物から農作物を守るには
獣害対策は、農作作の種類や被害を起こしている獣の種類にあわせて適切な処理が必要です。また、安全管理やメンテナンスを徹底しなければならないという点や設置の難しさなど、個人で対策を行うのは非常に厳しいものだと言えます。地域・集落で協力して害獣対策を行い、畑や農作物を守れる集落として、みんなで成長させていく必要があると言えるでしょう。