え、そんなに!有効求人倍率急上昇中の建設業界で人材採用を考える

2016年02月22日

20160222

建設ラッシュと就職希望者減少のダブルパンチに耐え抜く方法

建設業界で人事を担当している人は、昨今の人手不足の影響を痛感しているはず。
その要因と現状について考え、成功している採用手法の事例を紹介していきます。

採用できない!有効求人倍率の高騰

近年、建設業界では人材不足が深刻な問題となっています。
有効求人倍率(平成27年12月)は全体が1.21なのに対し、建設業は何と3.28です。
これは、1人の求職者を3.28社が取り合う計算です。
リーマンショック後の不況から立ち直り、採用をはじめた企業が増えたこともあってライバルが多い状況が続いています。

これまでより高い賃金を提示しなければ人材が集まらず、労務単価が25%程度上昇するなど人件費も高騰しています。
とくに若手不足は深刻な問題といえるでしょう。


建設業における人手不足の要因

建設業における人手不足の要因には、需要の拡大と供給の減少という2つの側面があります。
人材の需要拡大の背景にあるのは、震災復興やオリンピック景気による建物の建築数増加と、新築住宅の着工戸数増加傾向です。
必要な人材の絶対数が増えているのです。

供給減少の背景には、建設業の不人気があります。
建設業は暑さや寒さの中での現場仕事。
体力的負担が大きく、賃金や休みが少ない、景気に左右されるといったマイナスイメージが若い世代に定着してしまっているのです。

建設現場で必要になる技術は勉強だけで身につくものではありませんが、応募してくる人材自体が少ないうえに、昔ながらの仕事の指導方法が通用せず、せっかく採用した人材がすぐに離れるケースも少なくありません。

成功した建設業の採用手法の事例

人材不足の建設業界でも、採用手法の工夫次第で充分人材確保は可能です。
こちらではそれらの手法の一部をご紹介します。


女性の採用を増やして、職場を活性化

建設業は他業種と比べて、女性が少ない業種です。平成26年に官民共同で策定した「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」では、5年間で女性倍増を目指しています。
女性だけのチームを作る、関連会社間での女性の交流を活発化するなどして女性が働きやすい職場作りに取り組んでいる会社があります。

女性のための職場環境や福利厚生の制度の見直しすることで、男性にとっても働きやすい職場を考えるきっかけになるようです。
また、職場に女性がいることでコミュニケーションが円滑になる効果も期待されています。

官民共同で作成した電子ブックが公開されていますので、そちらもご覧ください。 https://genba-go.jp/wordpress/wp-content/themes/thegenba/woman-casebook/HTML5/pc.html#/page/1


現場の清掃、安全活動をブログで発信

建設現場の仕事の厳しさ、危険をイメージして敬遠する人も少なくありません。
建設現場のちょっとしたことをブログ形式で公開していくことで応募意欲を高めることができます。
現場の清掃や安全活動なども業界外の人は意外と知らないものです。
当たり前に取り組んでいることを社外に発信していくことで、採用活動だけでなく、施主からのイメージも良くなります。

現場での禁煙を徹底し、それをブログで情報発信したことで、個人宅からのリフォーム依頼が増えた、という話も聞いたことがあります。


年齢にこだわらず、間口を広げる

建設業と言えば力仕事のイメージも強いですが、近年は機械化が進んでいるため女性や高齢者でも充分可能な仕事が増えてきています。
これまで必要とされてこなかった層をターゲットに募集すれば人材確保の可能性は高まるはず。
大手企業で経験を積んだベテラン職人を採用すれば、若手の技術育成も可能です。


労働環境の整備で働きやすく

最近の若い人たちに好まれる労働条件を提示することで、人が集まりやすくなります。
例えば、建築業界では週休一日制や隔週で週休二日制が当然でしたが、通常の企業のように週休二日制を導入すればそれだけで若い人材確保に繋がる可能性も。
将来への不安を拭う社会保険への加入や分煙制度の導入も検討してみましょう。
厳しい指導ばかりではなく、イマドキの若者に合わせアニュアルにのっとった指導体制への切り替えなども効果的です。


こんな採用事例も

リファラル採用(縁故採用)は、いわゆるコネによる採用です。
海外では一般的なこの方法は、募集による広告費用の必要がないうえ、定着率も高いというメリットがあります。
紹介者から社風が伝わっており、信頼関係もあるためではないでしょうか。

まったくの未経験者を採用し、一から研修するという方法もあります。時間はかかりますが、結果として一人前の職人確保に繋がるのです。
ただし「一人前になったら辞めた」ということになりがちなので、信頼関係の構築が欠かせません。
「外国人技能実習制度」の利用も労働力確保には有効ですが、実習生の場合就業年数が限られているので、基幹社員候補者の確保と並行して進めましょう。


おわりに


人材確保のため建前だけで面接をすると、ミスをして叱られるなど嫌なことがあった時に「騙された」と突発的に辞めてしまうことも。
成長のための厳しい指導には対価があること、従業員を大切にすること、これらを誠心誠意伝えておきましょう。
人材確保だけに力を注ぐのではなく、実際現場で叱るようなことがあれば、そのあとしっかりフォローを入れ離職率の低下を常に意識することも大切です。

休みや給与のアップには、利益の確保が欠かせません。業界の構造として下請けの仕事が多く、孫請けや4次請けになっているところも。
中抜き丸投げによる利益率の悪さが従業員への待遇の悪さに繋がるならば、直請けの仕事を増やし利益率を上げるような経営努力も求められます。